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【スペース クリスマシアン】

 

-利用規約-

非営利である限り、自由に使ってください

営利の場合は要相談

 

約25分


最低比率 男2:女2:不問1

ゼク(♂):宇宙何でも屋社長
ネルラリ(♀):獣と人を合せたような宇宙人 何でも食べる
ディシム(不問):人型ロボット 通称ディス DCM-00Pという型番を持つ

        なんでもしまえるディメンションストレージの持ち主 

ファムハ(♀):地球人と宇宙人のクォーター

ウィリアム(♂):ファムハの祖父 老人時と若い時有
 

アリス(♀):地球でのウィリアムの恋人

大家(不問):スペースエブリシング事務所を貸している大家

配達員(不問):スペースデリバリー配達員
娘(♀):アリスの孫娘

木、魚、石(不問):宇宙的生命体達

N(不問):ナレーション

 

配役表
 

ゼク(♂):
ネルラリ(ネル)♀:
ディシム(ディ)不問:
ファムハ(ファ)♀:
ウィリアム(ウィ)♂:


以下、兼役
N(不問):
アリス(アリ)♀:
大家(不問):
配達員(配達)不問:
娘(♀):
宇宙生命体達(木、石、魚)不問:

 

 

※テスト時配役
ゼク
ネルラリ+娘
ディシム
ファムハ+アリス
ウィリアム+N

大家+配達員+宇宙生命体達

 

--------------------------------------------------

 

ゼク「テテテテー、テー、テテテテー、テー、テテテテー(スターウォーズのテーマ)」(無くても問題ないです)

 

N「これは遠い、遠い銀河のお話……ではなく、ちょっとだけ離れた銀河の壮大なお話……でもなく

  少し未来の小さな星でのちょっとしたお話……」

 

 

・宇宙何でも屋「スペースエブリシング」事務所 ラジオから流れるCM

 

ディ「わー、大変だー、こまったなー、どうすればいいんだー」

 

ゼク「何かお困りかい!? そんなときは、スペースエブリシング!!

   ゴミ屋敷の掃除からスペースデブリの掃除、迷子になったペットのドネルヴァ探し、宇宙ダニの駆除まで

   何でもお任せください! 君の困りごとも、こうやって、ちょちょいのちょい!」

 

ディ「わー、家も綺麗になったし、デブリも綺麗さっぱりなくなって

   更にはペットも見つかって、なんてすごいんだー」

 

ゼク「宇宙ダニもついでにやっといた、ぜ! 何かお困りごとがあればスペースエブリシングまで!

   連絡は第六銀河、第八惑星デルヴァの5の24まで! 皆様の依頼、待ってます!」

 

(間)

 

配達「……銀河の果てまで荷物を届けたい? 今こそ、スーパースペースデリバリーのでばn」

 

ネル「お腹減った―!! がじがじー!」

 

ディ「ああ、ネル。 ラジオを噛まないでください」

 

ネル「お、な、か、へっ、た―!! へった、へったー!」

 

ゼク「あー、やかましい!! 空腹くらい気合いで何とかしろ! というか、冷蔵庫の中になんか入ってるだろ!」

 

ディ「ゼク、申し訳ないのですが、冷蔵庫はすっからかんです」

 

ゼク「なっ!? ネル、お前食べすぎなんだよ!」

 

ディ「ゼク、それを差し引いても、ここ最近冷蔵庫に食べ物が追加された形跡が……」

 

ゼク「うぐ……! さっきみたいにスペースラジオにCMを流してるんだ! もうすぐ依頼が来るぞ!」

 

ディ「ピンポーン! ……!?」

 

ゼク「お、さっそく来た来た!」

 

ディ「ゼク、また私を改造しましたね。 今度は入り口のチャイムと連動させ、ピンポーン! ピンポーン!」

 

ゼク「はーい、今行きますよーっと!」

 

ネル「ぴんぽーん! ぴんぽーん!」

 

ディ「ネル、叩かないでください。 私を叩いてもチャイムは鳴りません」

 

ゼク「はい、お待たせいたしました! スペースエブリシングへ、ようこ……大家さん、どうも……はは……」

 

大家「家賃」

 

ゼク「ああ、それなら近い内にまとめて……」

 

大家「家賃」

 

ゼク「今依頼金の振り込みを待ってて……」

 

大家「フンッ!」

 

ゼク「おぶへっ!」

 

ネル「おー、とんだ! とんだー!」

 

ゼク「ぐへっ!」

 

ディ「見事な顔面着陸です」

 

ネル「大家さん、ばいばーい!」

 

ゼク「うぐ……まずいことになった……。 このままだと食べ物どころか、ここを追い出されるかもしれんぞ……。

   こればかりは気合いでどうにも出来ん……」

 

ディ「それはまずいですね……。 やはり、今はスペーラジオよりもスペースチューブなのでしょうか」

 

ネル「ブンブ-ン! はろー、すぺーすちゅーぶ!」

 

ディ「有名になれば、それなりの収入も手に入れられるみたいですし」

 

ゼク「おれは有名になりたいんじゃない、人助けがした……」

 

ディ「ピンポーン! おや、また来客ですね」

 

ゼク「ひぃ! また大家か!? あの殺人張り手を喰らうのは嫌だ、嫌だ……」

 

ディ「……ネル、見に行ってあげてください」

 

ネル「りょーっかい!」

 

ゼク「あの大家はネルに甘いってのは知ってるんだ……。 きっとチョップくらいで終わるはずだ……」

 

ネル「なーーッ!!」

 

ゼク「やられたか!?」

 

ディ「おそら……ピンポーン! ネル、呼びたいならチャイムじゃなくて

   ちょくせ、ピンポ、ピンポ、ピピピピンポーン!」

 

ゼク「……様子がおかしいぞ?」

 

ディ「そのよ、ピンポーン! です、ピンポーン! ね」

 

ゼク「……正直、すまなかった」

 

ディ「大丈夫です」

 

ネル「ゼク―!! ディス―!!」

 

ゼク「おお、無事か! どうした!?」

 

ネル「いら……いら……!」

 

ゼク「一旦落ち着け! 深呼吸、深呼吸!」

 

ネル「スーハー……スーハー……。 いらいn」

 

ファ「あの……こちらは、スペースエブリシングで間違いないでしょうか……?」

 

ゼク「依頼人だー!!」

 

 

ディ「つまり、依頼というのはそこの車椅子のご老人であるあなたの祖父に

   故郷である地球のクリスマス、という行事を再び体験させたいということでよいのですか?」

 

ファ「……はい」

 

ゼク「でも、ファムハさん。 具体的に何をすれば?」

 

ファ「祖父によれば、木に、光る物と星を……だそうです」

 

ゼク「なんだ、そりゃ……? ディス、お前何か分かんないのかよ?」

 

ディ「スペースペディアを調べてみましたが、地球の行事である、という情報以外は……」

 

ゼク「ふーむ……」

 

ファ「祖父は地球で宇宙開拓使という職に就いていたそうです。

   本来、祖父は私の星に到着の予定はなかったのですが、宇宙船の事故で不時着し

   そして、当時の星の技術的な問題から帰るに帰れず、永住の決断をするに至った、と聞きます」

 

ゼク「これはまた難儀なことで……」

 

ファ「安全に宇宙を移動出来るようになったのもつい最近のことなんです。

   祖父の命はもう長くありません。 そんな祖父に最後に地球の光景を、偽物でもいいから見せてあげたいんです」

 

ゼク「でも、なんで、クリスマス、とやらを?」

 

ファ「祖父が昔、一度言っていたんです。 出発した日はクリスマスだった、と」

 

ゼク「なるほど、最後の地球の光景ってわけか。

   ところで、あんまり言いたくないのですけども、へへ、依頼金の方は……」

 

ファ「宇宙の通貨は出せませんが、こちらで依頼を受けてくれませんでしょうか。 ……私の星に伝わる宝です」

 

ディ「これは、これは……」

 

ネル「わー、おっきー!」

 

ゼク「げ、こんなデカい宝石いいのか!?」

 

ファ「ええ、祖父は私の星のために様々なものを捧げてきました。

   これは然るべき報酬だと、私の星の民の総意です」

ゼク「おいおい、こんだけデカい宝石が売れれば……」

 

ディ「ゼクは人助けがしたかったのでは……。 ですが、確かにうまく現金化できれば……」

 

ネル「むー?」

 

・以下、妄想

 

ゼク「おいおい、もっと酒もってこい! 今日はパーティーだ! ハハハハ!」

 

ディ「遂に私の真の姿を見せる時が来たようですね……。 鋼鉄合体スーパーディシム!」

 

ネル「ニャハハー、もうたべられないよー。 でも、甘いものはべつばらー!」

 

・妄想終わり

 

ゼク「グヘヘヘ……」

 

ディ「フフフ……」

 

ネル「ニャハハ……」

 

ファ「……あの、どうかなされましたか?」

 

ゼク「ああ、いや、なんでもない! 早速、そのクリスマス、とやらを始めようぜ!」

 

ファ「ああ、ありがとうございます!」

 


・事務所外の広場

 

ゼク「というわけで、木が必要とかいうから広い場所に来たわけだが……どんな木でもいいのか?」

 

ファ「私もそこまでは……」

 

ゼク「知らないなら仕方ねぇか……。 おい、ディス、お前の物置に木みたいなの有ったろ?」

 

ディ「ディメンションストレージのことを物置と呼ぶのは止めてください。 確かにあるにはありますが……」

 

ゼク「なら、それをここの広い場所にどーんと置いてくれ!」

 

ディ「いや、しかし、あの木は……」

 

ゼク「うだうだ言わずに出せっての! ここのボタンか? それとも、ここのボタンか?」

 

ディ「ああ、ゼク、勝手に弄らないでください……」

 

ネル「たのしそ―! ぽちぽちー」

 

ディ「ああ、ネルも……」

 

ゼク「お、こんな奥に……。 このボタンか?」

 

ディ「ああ、そのボタンは……クアッッ!!」

 

ゼク「うおっ、目からビームが! あぶねっ!」

 

ディ「当たったら洒落にならないので、勝手に弄らないでください」

 

ゼク「お……おう……(チャイムの音弄った時に押さなくてよかった……)」

 

ディ「はあ、仕方ないですね。 ディメンションストレージ解放」

 

ゼク「お、やっと出す気に……って、うおあ!」

 

木 「オグルロロァー!!」

 

ゼク「なんだ、この木!? というか、足に枝が巻き付いて……!! うおーあー、目が回る―!」

 

ディ「だから、出したくなかったんです」

 

ネル「ぐるぐる、ぐーるぐるー!」

 

ゼク「誰か助けろ―! ああ、ファムハさんっ、危ないからっ、木から離れっ……う、吐きそ……」

 

ディ「ああ、まずい。 ネル、どこでもいいので根っこを噛んでください」

 

ネル「りょーかい! ぴょん……ぴょん、ぴょん、ぴょん! がじー!」

 

ディ「こうすればこの木、オドララント種は大人しく……」

 

ゼク「おお、枝の力が弱く……! って、今弱くなったらまずいだろぉぉぉぉぉ……」

 

ネル「おー、とんでったー!」

 

ディ「……まあ、大人しくなるのです」

 

ファ「……ハハハ」

 


ゼク「いててて……酷い目にあった……」

 

ファ「……大丈夫ですか?」

 

ゼク「なんのこれしき、お金を思えば……ゴホン!」

 

ネル「おっかね、おっかねー!」

 

ゼク「うっさい! なんにせよ、次は光る物、か」

 

ディ「光る物、とは一体何なのでしょうね」

 

ゼク「光る物……光る物……。 あ! ネル、お前、寝床の下に使えそうなのあっただろ」

 

ネル「にゃ!? な、なにもないよー……?」

 

ゼク「お前はバレてないつもりかもしれんが、臭いで分かる」

 

ディ「確かに、私の臭いセンサーにも著しい反応が見られましたね」

 

ファ「……臭い?」

 

ネル「でも……でもー……」

 

ゼク「……働かざる者、食うべからず……明日からご飯抜き……」

 

ネル「にゃー!? も、もってくるー!」

 

ファ「少し泣いてましたけど……」

 

ゼク「ああ、あいつはあれくらいがちょうどいいんです。気にしないで。 

   それよりも見ててくださいよ。 最高の光る物を飾り付けてやりますよ!」


ディ「ゼク、バランス的にあと右に30です」

 

ク「おうよ」

 

ディ「ネルは上に15、左に42」

 

ネル「うー……さよならー……」

 

ゼク「よし、飾り付け完了!」

 

ファ「こ、これは……?」

 

魚 「オギョギョ、ギョ、ギョ!」

 

ゼク「多分、海洋惑星に行ったときに持ち帰ってきたんでしょう。

   自ら発光する魚です! 肺呼吸するから鮮度もバッチリ!」

 

ファ「なにか……抱いてたイメージと違うような……」

 

ゼク「まあ、まだ途中ですから、完成したら様になりますよ! ……多分」

 

ネル「ううう……おさかな―……ぼくのごはんー……」


 

ディ「というわけで、最後の星となったわけですが……」

 

ゼク「星……か。 まさか、本当の惑星とかなわけじゃないだろうしなー……」

 

ファ「祖父が飾って見れるサイズですので、それはないかと……」

 

ゼク「星……星……。 そういや、近いもんが、確か!」

 

ファ「あ、ゼクさん」

 

ゼク「ちょっくら取ってきます―!」

 

ファ「は、はあ……」

 


ゼク「お待たせしましたー! これはどうですか!」

 

ファ「これは一体……?」

 

ディ「一見、ただの石のようですが」

 

ネル「なぁにこれー?」

 

ゼク「これはな、昔拾った隕石だ! 隕石も星みたいなもんだろ!」

 

ディ「なんて乱暴な」

 

ゼク「物は試しだ! とりあえず飾り付けよう!」

 

ディ「これまた強引な」

 

ゼク「ネル、これをあの木のてっぺんに飾ってくれ。 ……ネル?」

 

ネル「……ぷい!」

 

ゼク「おいおい、機嫌直してくれよ」

 

ネル「……ぷいぷい!」

 

ゼク「……これが成功したら魚食べ放題……お腹いっぱい食べ放題……」

 

ネル「むむむ……やる!」

 

ゼク「ほい、よろしくっと! ちょうど一番上に頼むぞー!」

 

ネル「よっ、ほっ、よい、しょー!」

 

ゼク「サンキュー、ネル! これで完成だな!」

 

ディ「……それにしても、なんというか、地球人は随分独創的なものを飾るのですね」

 

ゼク「……確かに」

 

魚 「オグルロロ……」

 

木 「オギョギョギョー!」

 

ファ「……と、とにかく、祖父を連れてきて、反応を見ましょう!」

 

 
ファ「……おじいちゃん、おじいちゃんが言ってたクリスマス。

   完全にその通りには出来なかったけど、飾りものだけでも用意してみたよ……。 どうかな……?」

 

ディ「どうですか?」

 

ファ「……ダメみたいです……。 もしかしたら、祖父はもうこの光景さえまともに見る事が出来ないのかも……」

 

ゼク「ダメだ!」

 

ファ「!?」

 

ゼク「折角、ファムハさんが想いを伝えようとしてるのに、ここで諦めるなんて、そんなこと俺が認めない!」

 

ファ「……え?」

 

ゼク「ファムハさん、おじいさんのお名前は?」

 

ファ「ウィリアム、ですけども……」

 

ゼク「ウィリアムか、よし! スーハー……。 頑張れ、頑張れ、ウィリアム!」

 

ファ「ぜ、ゼクさん、何を……!?」

 

ゼク「何って、応援ですよ! まだまだいけるだろ、ウィリアム!」

 

ファ「……」

 

ディ「あー……いきなりですみません。ゼクは困った時に精神論に頼るきらいがあるのですよ」

 

ゼク「ディス、お前も応援しろ! ネルもだ!」

 

ディ「頑張れ、頑張れ、ウィリアムー」

 

ネル「ふぁいっと、ふぁいとー、おー!」

 

ゼク「ファムハさんも、ほら!」

 

ファ「え……!? う……。 ……頑張れ、頑張れ、おじいちゃん!」

 

ゼク「その調子! その調子!」

 

ファ「……最後くらい、私に家族らしいことさせてよ!!」

 

石 「モォォーーーーン!!」

 

ゼク「うお、何だ、何だ!? 木の上の隕石が光って喋った!?」

 

ネル「おー、ぴかぴかー!」

 

ディ「まさか、あれは、エクスプロジア・ストーネル?」

 

ゼク「何だ、それ!?」

 

ディ「植物と水気を帯びた物の近くで大音量を聞かせると、大爆発する石型生命体です」

 

ゼク「えらく限定的な条件だな! それで、爆発の規模は!?」

 

ディ「およそ半径1キロ、爆発したらどうしようもありません」

 

ゼク「おいおい、マジかよ……! そういうのがあるのを知ってたなら先に言えよ!」

 

ディ「聞かれてなかったので」

 

ゼク「事務的!」

 

ディ「しかし、あれは、遥か昔に絶滅したはず……」

 

ファ「ぜ、ゼクさん、どうすれば……」

 

ゼク「くそ、どうする、どうする……!」

 

ディ「内部温度が上昇しています。 爆発までおよそ30秒」

 

ゼク「……やるしかねぇ! ネル、石を持ってこい!」

 

ネル「りょーかいー! ほっ、やっ、と!」

 

ゼク「ディス! 外部衝撃による爆発は!?」

 

ディ「記録によれば0です」

 

ゼク「ネル、石をそこから俺に向けて投げろ!」

 

ネル「りょ! ぐるぐるー……ポイ!」

 

ディ「爆発までおよそ15秒」

 

ゼク「(短い深呼吸) 空の彼方まで吹き飛べぇ! ブーストキックッ!!」

 

ファ「す、すごい……!」

 

ディ「ゼク、あと少し距離が」

 

ゼク「ディス、石の方を向け!」

 

ディ「……なるほど」

 

ゼク「押し出せぇぇぇ!」

 

ディ「クアッッ! クアッッ! クアッッ!」

 


ネル「どっかーん!」

 

ゼク「……っ!」

 

ディ「間に合った、ようですね」

 

ゼク「……ふぅー、よかったー……」

 

ファ「ふぅ……。 ……!? ゼクさん、その足、機械で……!?」

 

ゼク「ああ、元々機械の足なんですよ。 今回はちょっと無理させちまったかな……」

 

ディ「これは後で修理が必要ですね」

 

ネル「しゅうりー、しゅうりー」

 

ゼク「ああ、いや、自分でやる! チャイムのお返しされそうだ……」

 

ディ「そんなことしませんよ」

 

ファ「……ごめんなさい、私のために……」

 

ゼク「はは、気にしない、気にしない! これも依頼の内で……。 ……?」

 

ファ「これは……雪?」

 

ネル「おー! ゆき、ゆき―! あむあむー」

 

ゼク「こら、ネル、雪を拾い食いするな」

 

ディ「どうやら、爆発の際に周囲の熱を吸収し、その影響で降ってきているようですね」

 

ネル「にゃははー、ゆき、ゆきー! ごろごろー!」

 

ゼク「あんなことの後にネルは元気だな……」

 

ウィ「……あ……うあ……」

 

ファ「……!? おじいちゃん!?」

 

ウィ「う……あ……」

 


・ウィリアム、出発前の記憶

 

アリ「雪が降ってきたわね……」

 

ウィ「……ああ」

 

アリ「明日まで降り続けるかしら」

 

ウィ「……分からない」

 

アリ「とうとう、明日出発なのね……」

 

ウィ「……ああ」

 

アリ「いつ帰ってこれるの?」

 

ウィ「……分からない」

 

アリ「あなたってば、そればかり! ああ、分からない、明日お別れなのに……っ!?」

 

ウィ「……必ず戻ってくる……必ずだ」

 

アリ「抱きしめながらそんなこと言われたら、何も言い返せないじゃない……」

 

ウィ「宇宙には、宝石で出来た星があるらしい。

   アリス、君にその星の特別綺麗な部分をプレゼントしに帰ってくる。 約束だ」

 

アリ「……期待して待ってるから……」

 

ウィ「……ああ」

 


・ゼク達のいる広場

 

ファ「……おじいちゃん……泣いてるの……?」

 

ウィ「あ……うう……」

 

ファ「おじいちゃん、意識が……」

 

ウィ「……」

 

ファ「おじいちゃん……? おじいちゃん! おじいちゃん! う……く……うわぁぁぁぁ……」

 

ゼク「……」

 

ネル「にゃー……」

 


・事務所内

 

ディ「落ち着きましたか?」

 

ファ「……はい」

 

ディ「あの、私は機械なので、生き物の感情というものに少し疎くて、上手く言えないかもしれませんが

   その、お悔やみを申し上げます……」

 

ファ「……ありがとうございます。 ……ゼクさんはどこに?」

 

ディ「ゼクならネルと一緒に事務所の外にいるかと……」

 

ファ「ちょっと……話をしてきます」

 

 

ゼク「(鼻をすする音)」

 

ネル「ぜく―、どしたのー?」

 

ゼク「な、なんでもねぇよ!」

 

ファ「……泣いてくれてるんですね」

 

ゼク「ファムハさん!? そ、そんなことは……」

 

ファ「フフ……ありがとうございます」

 

ゼク「……。 ファムハさんの想いは、おじいさんに届いたのかな、って」

 

ファ「ええ、きっと届きましたよ。 あなた達が精一杯頑張ったんですもの、届かないはずがないですよ」

 

ゼク「だと、いいんだけどな……」

 

ファ「そういえば、祖父の上着にこんなものが……」

 

ネル「ぺらぺらー?」

 

ゼク「これは?」

 

ファ「写真、というものらしいです。 一緒に写っている女性は、地球で恋仲にあった女性かと」

 

ゼク「……裏に何か書いてある。 最高の宝石を君に、約束……か。 ありがとう」

 

ファ「いえ……祖父の遺言で、祖父の遺体は私の星に埋めようと思います。 今回はありがとうございました」

 

ゼク「俺はそんな……」

 

ファ「約束の宝石は事務所の机に置いてありますので……」

 

ゼク「……ああ」

 

ファ「では……」

 

ネル「バイバーイ!」

 

ゼク「……」


 

・事務所内

 

ディ「……本当によかったんですか?」

 

ゼク「もうしちまったもんはしかたねーだろ!」

 

ディ「それもそうですが」

 

ネル「おなか、へったー!」

 

ゼク「うるせー、これでもくってろ!」

 

魚 「ギョギョギョ!」

 

ディ「取ってあったんですね」

 

ネル「おさかな! がじがじー!」

 

ゼク「はあ……大家からの催促、どれくらい伸ばせるかな……」

 

ディ「私もたまには大家さんにビンタされますよ」

 

ゼク「……ありがとう」

 


・地球

 

配達「すみませーん、スーパースペースデリバリーです! お届け物でーす!」

 

娘 「はいはーい」

 

配達「こちら、アリス様のご自宅で間違いないでしょうか?」

 

娘 「おばあちゃんに……? ああ、はい、そうです」

 

配達「では、こちらにサインを」

 

娘 「はいはい……っと」
 
配達「ありがとうございます! では、こちら、荷物です。 ぜひまたご利用くださいませー」

 

娘 「はい……って、おもっ! 何が入ってるの……。

   差出人はウィリアム・アーサー……おばあちゃんの古い知り合いかしら。

   あら、メッセージカードが……。 君に最高の宝石を……?」

 

 

End
 

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