top of page

【ハッピー マジカル レインディア】

 

-利用規約-

非営利である限り、自由に使ってください

営利の場合は要相談

 

約16分の作品
 

比率 男0:女1:不問3

 

登場人物

スノッフ:白い魔法トナカイ 他の仲間と違い未だ飛べない
ウーゴ:イエティの子供
フラー:魔法トナカイ 同じ魔法トナカイだが、身体の色や飛べない等の理由からスノッフを仲間とは思ってない
トビー:同上

クマ;唸ったり、吠えたりするだけ
語り手:老婆 最初と最後だけ

 

配役表
スノッフ不問:
ウーゴ♀:
フラー不問:
トビー不問:

クマ不問(兼役):
語り手♀(兼役):

 

-----------------------------------------------------

 

・暖炉傍で椅子に揺られる老婆 その部屋へ幼子が現れる

 

語り「おや……どうしたんだい? フフ、眠れないのかい? じゃあ、少しお話でもしようか。

   昔、昔、あるところに一匹の白いトナカイがいましたとさ……」

 

 

・なだらかな傾斜となった雪原の頂点に佇む一匹の白トナカイ、スノッフ

 何度か深呼吸すると、傾斜の先へと向けて駆け出す

 

スノ「スーハー……スーハー……。 よし、今度こそッ! ……3……2……1……、今だ!」

 

スノ「飛べ…飛べ…飛べ…! よし、今度こそうまく…うわ、バランスが、わわわわわ!」

 

ジャンプした白トナカイは、一瞬だけ宙に浮いたがそのまま落下 雪の中から顔を出すトナカイ

 

スノ「ブハッ……またダメか……。」

 

スノッフの頭をよぎる声

 

フラ「スノッフ君は相変わらず飛べないみたいだねぇ!」

 

トビ「ヒヒ、何をやってもダメなスノッフ!」

 

フラ「可哀想なスノッフ君!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

スノ「……いや、そんなことない! あいつらを絶対見返してやる! もう一回!」

 

傾斜の頂点へ再び戻るスノッフの様子を木陰から伺う影

 

ウー「ウーゴー…?」

 

スノ「今度こそ…ッ! っと、わわわー!」

 

再び落下

 

スノ「ブハッ……はあ……ん?」

 

ウー「ウーゴー?」

 

スノ「イエティの子供…? どうしてこんなところに…?」

 

ウー「ウーゴー! ウーゴー!」

 

スノ「うわっ、背中に乗るな! お前の乗り物じゃないんだぞ! 僕は飛ぶ練習で忙しんだ!」

 

ウー「ウーゴー?」

 

スノ「サンタのそり引きになるための試験がもうすぐあるんだ。

   そのためにこうやって飛ぶ練習を……って、お前に言っても仕方ないか……」

 

ウー「ウーゴー! ウーゴ!」

 

スノ「わわっ、背中で飛び跳ねるなっ! 僕の言ってること全く聞いてないな! このっ!」

 

勢いをつけて遠くへ放り出されるウーゴ

 

ウー「ウーーゴーー……」

 

スノ「あれだけ飛ばせば戻ってこないだろ……。 ふう、うるさいのがいなくなった……。

   あんなのに構ってる暇は僕には無いんだ……」

 

頂点から再び走り出すスノッフ

 

スノ「今までで一番勢いが出てる! これなら成功s」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「うわっ! いつの間に!? というか、いきなり背中に飛び乗るなっ! バランスがっ!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「わわわわわー!」

 

二匹は転がりながら最初の落下地点へ 雪の中から顔だけ出すスノッフと飛び出すウーゴ

 

スノ「……ぶはっ!」

 

ウー「ウー……ゴッ! ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「(唸り声)」

 

スノ「はあ、結局昨日はあいつに邪魔されて、あの後まともに練習できなかった……。

   昨日とは場所も変えたし、あいつもいないだろ……。 よし、今日こそはッ! ……3……2……1……今d」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「うわっ、こいつ木に隠れてっ! だから、背中に乗るなって、わわわわわー!」

 

大きな雪玉になって転がる二匹、木にぶつかり止まる

 

スノ「……えほっ」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「(唸り声)」

 

スノ「昨日もまともに練習できなかった……。 この雪原なら木からあいつが飛び移ってくることもないだろ……。

   少し傾斜が足りないけど、文句は言ってられないな。 よし、行くぞッ! ……3……2…」

 

ウー「ウー……ゴッ!」

 

スノ「うわっ、今度は雪の中から! だああ、角を持つなー! 離せ―!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「このっ、こいつ! はな……って、いてっ!」

 

雪原を歩いていたクマにぶつかるスノッフ

 

クマ「(唸り声)」

 

スノ「あ、あははー……。 お元気ですか―……?」

 

クマ「(咆哮)」

 

スノ「そんなわけないですよねー! に、逃げろー!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「クソ―! 楽しそうにして! 僕は全然楽しくないぞ!」

 

クマ「(咆哮)」

 

スノ「……今日こそ、今日こそは……。 流石に凍った湖面の上ならあいつも突然出てこないだろ……。

   スーハー……スーハー……。 気を取り直してッ! ……よし、今日は飛び掛かってこない……! 今だッ!」

 

湖面を割って現れ、宙に浮いたスノッフの脚を掴むウーゴ

 

ウー「ウー……ゴ!」

 

スノ「うわっ、なんで氷の下から! 脚につかまっ……! バ、バランスが―!」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「うわわー、落ちる―! いてっ! っとととと、滑る、滑る―! 木に、木にぶつかる―!」

 

ウー「ウーゴー!」

 

木に激突するスノッフ、木から雪が二匹に落ちる

 

スノ「……ぶはっ!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「(唸り声)」

 

ウー「ウーゴ! ウー……クシッ!(くしゃみ)」

 

スノ「そりゃ、水の中にいたら、そうなるだろ……」

 

ウー「クシッ! クシッ!」

 

スノ「(悩むような声)……あー、もう、僕のせいで体調崩したみたいになってるじゃないか! ほら、背中に乗れ!」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「ほら、早く!」

 

ウー「ウーゴ! クシッ!」

 

スノ「うわっ、鼻水背中につけるなよ! ……はあ、まったくなんでこんなことに……」

 


・スノッフの住処の洞窟にて


スノ「ここなら寒さもしのげるだろ……。 この洞窟に自分以外入れたことないんだからな? そこの寝床で休んでな」

 

ウー「ウー! ……クシッ! クシッ!」

 

スノ「(悩むような声)……はあ、魔法の力を飛ぶ以外に使いたくはなかったけど、仕方ない……」

 

ウー「ウー?」

 

角をウーゴに近付けるスノッフ 洞窟内に暖かな光が広がる

 

スノ「……よし、これで少しはマシになったろ」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「うわっ、暴れるな! 大人しくしてろって!」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「はあ、なんでこんなことになったんだか……。 なあ、お前、家族とかはいないのか?」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「仲間たちからはぐれたのか?」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「それもよく分からない……か」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「はは……そんな細かいこと関係ない、って感じだな」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「ふふ、お前に心配されるとは、ね」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「そういえば、お前、名前はなんていうんだ?」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「ウーゴ……でいいのか?」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「僕の名前はスノッフ、スノッフだ」

 

ウー「ウー? ……ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「まあ……そうなるよな 何か、食べ物探してくる。 ここでじっとしてろよ?」

 

ウー「ウーゴ!」


・洞窟の外 雪に埋まった食べ物を探すスノッフに、空中から近付く二つの影


スノ「この雪の下に何か……、お、あったあった」

 

フラ「おやおや、これは、これは、飛べない可哀想な白トナカイのスノッフ君じゃないですか!」

 

トビ「いい加減飛べるようになったのかよ? ヒヒヒ」

 

スノ「フラーとトビー……! なんでここに!」

 

フラ「いやいや、スノッフ君がとぼとぼ歩いているのを見かけて、同じそり引き仲間として声をかけようと思ってね!」

 

トビ「あ、でも、まだ飛べないんじゃそり引き仲間じゃないかもなぁ!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

スノ「……今年こそは、お前らよりも上手く飛んで、そり引きに選ばれてやるからな!」

 

トビ「へえ、そりゃ楽しみだ! またみじめな姿を俺たちの前に晒さないように気を付けるんだな!」

 

フラ「はは、違いない! ま、僕達はそれも楽しみにしてるけどな!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

フラ「そろそろ、東の断崖にあるとかいう魔法の草に頼るしか無いかもな!」

 

スノ「あんな迷信に頼らなくても…っ!」

 

トビ「分かんないかなあ! それくらいしなきゃ、どうせダメだってことだよ!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

フラ「じゃ、せいぜい頑張ってくれ、スノッフ君?」

 

トビ「ま、頑張ればいつか飛べるかもな! いつになるかは知らねーけど! ヒヒヒ」


飛び去っていく二匹


スノ「くッ……!」

 

ウー「……ウー?」

 

スノ「……!? お前、見てたのか……?」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「……ああ、そうさ、僕は落ちこぼれのトナカイさ!

   他の奴等にバカにされて、飛ぼうと努力しても、それでも飛べないダメなトナカイさ!」

 

ウー「……ウー」

 

スノ「ハッ、同情のつもりか!

   お前みたいな能天気なやつには仲間外れにされたり、どんなに頑張っても出来ない苦しみは分からないだろうな!」

 

ウー「ウー……」

 

スノ「そんな目で僕を見るな! もう……どこかに消えてくれ! 僕に構わないでくれ!」

 

ウー「ウーゴー……」

 

スノ「クソッ……八つ当たりをして、何をしてるんだ僕は……」


・最初の練習場所に佇むスノッフ

 

スノ「昨日は少し言い過ぎたかもしれないな……いや、でも、あいつがいるとまともに練習できないし

   これでいいんだ、これで……。 あまり考えても仕方ない! 練習、練習! スーハー……スーハ……。

   よしッ! ……3……2……1……、今だッ! うわわっ!」

 

そのまま落下し、雪に突っ込むスノッフ

 

スノ「……ぶはっ! ……はあ、やっぱりダメなのかな……」

 

雪に半ば埋まったスノッフに空から近付くフラー&トビー

 

フラ「おやおや、さっきスノッフ君がここにいた気がしたのだけどなぁ?」

 

トビ「お、よく見たらこんなとこに埋まってるじゃねえか! 白すぎて雪と見分けがつかなかったなぁ!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

スノ「フラー……トビー……ッ!」

 

フラ「その雪に埋まるのは、新しい特訓方法か何かかな?」

 

トビ「あまりにも斬新過ぎて、俺らじゃ思い付かなかったなぁ?」

 

トビ+フラ「(笑い声)」

 

スノ「く……ッ!」

 

フラ「そろそろ、君も迷信にすがらなきゃいけないかもしれないねぇ!」

 

トビ「さっき見た白いちんちくりんも、迷信を信じて崖を登ってたんだろうから

   お前もそれを見習った方がいいかもな!」

 

スノ「白いちんちくりん……? まさか!」

 

フラ「あんな草、どう使おうとも飛べやしないのに、あの毛玉も何を夢見てるんだかねぇ!」

 

トビ「フラー、それをスノッフの目の前で言ったら可哀想だろ? まあ、でも、違いない!」

 

トビ+フラ「(笑い声)」


トビー&フラーを無視し、駆け出すスノッフ


スノ「あいつ……ッ!」

 

フラ「おっとと、どこに行くんだい、スノッフ君! 今日の練習は終わりかい!」

 

トビ「俺らにも練習風景見せてくれよ―!」

 

フラ「……おや、行ってしまった。 何をあんなに焦ってるんだか」

 

トビ「さあ?」

 


件の崖へと駆けるスノッフ


スノ「ハア、ハア…… まさか……あの迷信の話を聞いていて、それで……?

   でも、何のために……? まさか、僕のために……? そんな、まさか、あんな酷いことを言ったんだぞ……?」

 

崖が見える位置へと着いたスノッフ

 

スノ「ハア……ハア……確かここが噂の……。 どこだ、どこにいる? ……いた! ウーゴ!」

 

ウー「!! ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「あんな高い所まで……! ウーゴ! そこは危ない! 早くそこから降りるんだ!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「あれが噂の魔法の草……? ウーゴ、こっちに手を振らなくていい! ちゃんと崖を掴んで……」


ウーゴ、バランスを崩し、崖から落ちる


ウー「ウー……ウゴッ!?」

 

スノ「おいおい、嘘だろ……! クソッ、間に合え、間に合え!」

 

ウー「ウーゴーーー!」

 

スノ「このままじゃ間に合わない……!? 飛べれば間に合うのに!! 飛べ、飛べ! クソッ、何で飛べないんだよ!

   何で、何で、何で! 酷いこと言ってごめんって……仲良くしようって……お前に言えないじゃないかよ……!

   この一瞬だけでもいい、飛んでくれよー!!」


強く目を閉じて念じたスノッフの体がゆっくりと浮き出し、ウーゴの下へと飛んでゆき、背中で受け止める


ウー「ウーゴ―――! ウッ……ウー?」

 

スノ「……あれ……飛んでる? 飛んでる、飛んでるぞ! ハッ、ウーゴは?」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「よかった……ちゃんと助けられて……」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「おわっ、暴れるなって! まだ上手く飛べなくて、バランスが……わわわ、落ちる―!」

 

フラフラと高度を下げ、雪原に突っ込む二匹

 

スノ「ブハッ!」

 

ウー「ウー……ゴッ!」

 

スノ「プッ……ハハハハハ!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「ハハハ……ごめんな、ウーゴ、前はあんな酷いこ、グムッ!?」


スノッフの口に草を突っ込むウーゴ


ウー「ウーゴ!」

 

スノ「これはあの崖の草……? やっぱり僕のために……」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「このバカ……。 ……でも、ありがとう」

 

ウー「ウーゴ!」

 

スノ「……」

 

ウー「ウー?」

 

スノ「にしても、この草にがー……」

 

ウー「ウー?」

 

残った草を食べるウーゴ

 

ウー「ウーゴー……」

 

スノ「でも、健康にはよさそうだな、フフ……フフフフ」

 

スー「ウーゴ! ウーゴ!」

 


・幼子へ語り聞かせる老婆


語り「こうして飛べるようになった白トナカイは……フフ、いつの間にか寝てしまったみたいだね。 いい夢を見るんだよ? ……おやすみ」


クリスマスの空を駆けるサンタ、その先頭にはスノッフが スノッフの背中にはウーゴが乗っている

 

スノ「ハッピーメリークリスマス!」

 

ウー「ウーゴ! ウーゴ!」

 

スノ「うわ、だから、大人しくしろってば!」


Fin

bottom of page