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【大変身】

-利用規約-

非営利である限り、自由に使ってください

営利の場合は要相談

フカヤ ゴウ♂:主人公
フカヤ レイ♂:弟
父♂:
母♀:

兼役
狂人不問:
司会不問:

警備♂:

 

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ゴウ「(悪夢に飛び上がる)ハア、ハア……。 あー、クソ、嫌な夢見た……」

ゴウM「ある日、悪夢から目覚めると……」

ゴウ「今何時だよ……。 4時半、か。 ログボまでもう少しね……よ……。 って、なんじゃこりゃー!」

ゴウM「虫になっていた」

 


ゴウ「な、何だこの腕……! 毛がたくさん生えて、細長くて……、まるで虫じゃねーか! か、身体は! 身体はどうなってる!?

  うぐぐ……起き上がれん……! ぬおおおお……」

レイ「ったく、うるせーな! 朝っぱらから何騒いでんだよ、あに……き……」

ゴウ「おお、レイ、いいところに来た! 俺の身体、身体はどう……」

レイ「キモッ! 兄貴、今めっちゃキモイ! ちょ、ちょっと待ってて!」

ゴウ「ちょ、まっ! 具体的に、具体的に教えてくれよ!」

レイ「お待たせ! ちょーっと動くなよ、今カメラで撮るから」

ゴウ「ああ、そういうことか! 撮ったら早く見せてくれ!」

レイ「まあ、待てって……。 おし……、朝起きたら兄貴が虫になってた件……、っと」

ゴウ「って、うおーい! 何ツイッターに画像あげてんだよ!」

レイ「で、何だっけ? ああ、身体がどうなってるか、だっけ。 ほら」

 

ゴウ「……マジかよ……なんで、こんな……」

 

レイ「どうする、父さんと母さん呼ぶ?」

 

ゴウ「ああ……頼む……」


父「レイ、こんな朝からゴウの部屋に来てくれって、どうしたんだ?」

母「あの子、部屋に入ろうとするの凄い怒るのに……」

レイ「まあ、見てみれば分かるって」

父「ゴウ、入るぞ。 一体、どうし……た……」

母「(息をのむ)」

レイ「ま、こういうこと」

父「一体、いつから……」

ゴウ「朝、目が覚めたら……」

父「なにか、心当たりはあるか…?」

ゴウ「そんなの、あるわけないだろ…っ!」

父「ああ、そうだよな…。 すまなかった」

ゴウ「いや、俺も、ゴメン…」

父「……」

ゴウ「……」

レイ「…でさ、結局どうすんの?」

父「それは…母さんと話し合って…」

レイ「ま、それもそうか。 ふぁー、ねっむ。 学校の時間まで寝よっと」

父「レイ、お前はこんな時に…。 ゴウ、とりあえずは安静にしてるんだぞ」

ゴウ「ああ…分かったよ」

父「……母さん」

母「ええ……」

ゴウ「……はぁ、何でこんなことになったんだ……。 俺は普通のフリーターで、他の奴等と同じように何もない

  ただの退屈な日々を過ごしていただけだってのに……。 なんで…。 なんで…」

 


ゴウ「……ハッ! いつの間に寝てたんだ……。 もう、外が暗くなってる……」

ゴウ「……レイ、一体、何してんだ…?」

 

レイ「ああ、記録だよ、記録。 こういうときは克明に記録を残すことが大事っていうだろ?」

 

ゴウ「……まさか、またネットに上げるつもりじゃないだろうな?」

 

レイ「……」

 

ゴウ「お前、図星だな!」

 

レイ「また後で!」

ゴウ「あ、クソ、待て! うわっ、あいてっ! くっ、上手く動けない…!」

父「大きな音がしたが、大丈夫か?」

ゴウ「ああ、上手く動けなくて…。 大丈夫だよ」

 

父「ゴウ、明日、医者に行こう。 何か……元に戻る方法が分かるかもしれない。 ……腹は大丈夫か?」

 

ゴウ「……チーズか、納豆が食べたい」

 

父「よし、チーズか、納豆だな。 探してくる」

 

ゴウ「……はぁ、これからどうなるんだろ……」

暗い自室、PCに向かい、キーボードを打つレイ

レイ「……これで、よし、と。 フフ、フフフフ……」


ゴウ「……はぁ……」

 

-ゴウ回想-

父「ゴウ、階段上がれそうか?」

 

ゴウ「…ああ、大丈夫だよ」

 

父「…その、何も分からなくてすまない」

 

ゴウ「父さんのせいじゃないさ。 こんな姿になった人間なんて今までいなかったろうし…」

 

父「…その…いや、なんでもない。 気を付けてな」

 

ゴウ「…ああ。 ……よいしょ、っと。 よ、っと。」

 

母「…ねえ、ゴウのことどうするの?」

 

ゴウ「母さんの声だ…」

 

父「どうするたって…」

 

母「あの姿のまま、ここに置いておくより、どこかに見てもらった方が…」

 

父「それは、ゴウに聞かないと…」

 

母「あのまま、ずっと家になんて…」

 

父「それは…」

 

ゴウ「くそっ……」

 

-ゴウ回想終わり-

 

ゴウ「……はぁぁぁぁ」

 

レイ「邪魔するよー」

ゴウ「いい加減お前はノック位……もういいや」

 

レイ「どうしたんだ、兄貴。 そんな暗くしてるとキモイ顔がもっとキモくなるぞ。 はい、チーズ」

ゴウ「……うるさい」

 

レイ「ま、奇異の目を浴びた上に、医者からも嫌な顔をされて、その上、明確な答えも貰えなきゃそうなるか」

 

ゴウ「うるさい……」

 

レイ「それに、親も自分を持て余してることを感じ始めて……」

 

ゴウ「うるさい! お前に何が……」

 

レイ「そんな兄貴に朗報だ。 一つ、稼いでみないか」

 

ゴウ「……は?」

 

レイ「俺に一つ考えがある。 絶対に損はさせない」

 

ゴウ「……」

 

レイ「それに、もしその姿を治すとなったら、きっと沢山金が必要になるはずだ。

  上手く稼げれば、その姿でしかできないことがあるって親を見返すことも出来る。 一石二鳥だろ?」

ゴウ「……」

 

レイ「どうだ、兄貴」

 

ゴウ「…もう、勝手にしろ」

 

レイ「おし! 何かあったら報告するから、楽しみに待っててくれよ!」

ゴウ「…はあ、まったく…」

 

ゴウM「この時は、この言葉をレイなりの不器用な励ましだと思っていた。 レイなりの気遣いだと。

   実際、しばらくは何もなかった。 何も…親からも。 でも、どうやらレイは着々と準備を進めていたみたいだ」

 


ゴウ「右足一番…左足一番…右足二番…左足…」

レイ「兄貴、起きて…、何してんだ?」

 

ゴウ「ああ、歩く練習を、な」

 

レイ「まだ上手く歩けないのか!?」

 

ゴウ「いや、もう普通に歩く位は…」

 

レイ「ああ、よかった。 ちょっと走ったりは?」

 

ゴウ「多分、出来るとは思うが…。 どうしたんだ、今日はいつもみたいに写真を撮りに来たんじゃないのか?」

 

レイ「いいや、今日は違う。 兄貴、外に出るぞ」

 

ゴウ「……は?」

 

レイ「チャンスが来たんだよ! あー…ほら、この布でもかぶって」

ゴウ「わわ、一体なんだよ!」

 

レイ「ほら、行くぞ!」

 

ゴウ「うわ、押すなって!」

 

レイ「この車に乗って」

 

ゴウ「この車、家の車じゃないな…? 一体どこに…」

 

レイ「細かいことは気にしない! ほら、乗った、乗った!」

 

ゴウ「うわっと」

 

レイ「じゃあ、お願いします」

 


ゴウ「訳も分からず、付いてきてしまった…。 一体、なんなんだ、ここは…」

ゴウ「レイ、いい加減、どういうことなのか説明してくれ」

 

レイ「これ、見てくれ、ほら」

 

ゴウ「ツイッターのアカウント…?」

 

レイ「兄貴のだ」

 

ゴウ「……は?」

 

レイ「兄貴の、アカウントだ」

 

ゴウ「お前、勝手に! だから、毎日のように写真を…。 意味が分からん…」

 

レイ「でも、フォロワーの数を見てくれよ。 一万だ、一万。

  それに、これがあるからこうやって仕事を貰えたんだ。 このメール見てみろ」

 

ゴウ「動画出演の…依頼? …まさか、これから?」

 

レイ「その通り」

 

ゴウ「おまっ、何すんだよ! 何もできないぞ」

 

レイ「兄貴はこの台本通りにやってくれればいい」

ゴウ「虫とおとうと、コント案…? まさか、コントするのか!?」

 

レイ「その通り」

 

ゴウ「さっきから、その通りばかりじゃねーか!」

 

レイ「実際、そうなんだから仕方ないだろ。 大丈夫、兄貴ならできる! ほら、台本覚えて。 一番のコントな」

 

ゴウ「なんで、こんな…!」

 

レイ「今は、こんなネット配信のちょっとした動画にしか出れないけど、ここから兄貴の、俺達の道が始まるんだ。 俺を信じてくれ」

 

ゴウ「……今回だけだからな!」

 

レイ「流石、兄貴! …あ、もう出演の時間だ」

 

ゴウ「なに!? 全然覚えてないぞ!」

レイ「あー……。 左足の前から順にカンペ貼ってくから…がんばれ! 兄貴ならできる!」

 

ゴウ「お前、ほんと、そればかりじゃねーか!」

 


レイ「コント、デート」

 

レイ「あー、みゆきちゃん遅いなー。 ちょっと早く着き過ぎちゃったかなー」

ゴウ「ごーめーん、待った―?」

 

レイ「お、来た、来た。 いや、全然、待って…。 って、キモッ! 誰だ、お前! というか…何だ!」

 

ゴウ「えー、わたしー、みゆきだよー。 ちょっとおめかしし過ぎちゃったかなー」

 

レイ「え、え、え? 君の家では特殊メイクをおめかしって言うの?」

 

ゴウ「この三番目の右足のネイルがなかなか上手くいかなくてぇ」

 

レイ「意外と細かい! ……」

 


ゴウM「正直、失敗したと思った。 コントの出来はダメダメ、。 俺のインパクトも一回見れば充分。

   この出来事は弟とのちょっとした思い出位で終わる、と。 そして、世間の反応は…」

 

ゴウ「…なあ、レイ…」

レイ「…なに、兄貴。 ああ、チーズ食べたいの? ほら、あーん」

 

ゴウ「自分で出来るっての! そうじゃなくて…」

 

レイ「じゃあ、俺が貰お。 あむ…。 やっぱ、上質なやつは違うねー。 …あ、ほら、見てみ」

 

ゴウ「どれどれ…。 うわ、すごいな」

 

レイ「フォロワー三万だぜ、三万」

 

ゴウ「こりゃまた随分と…。 って、いや、そうでもなくて…」

 

レイ「あ、また、変なリプ来てる…。 やっぱり、こいつか。

  あなたこそ、この世に現れた救世主、我々に救いを…ね。 飽きないねー。 そろそろ、ブロックしとくか…」

 

ゴウ「…レイ、聞いてる? レイくーん?」

レイ「え、なに、どしたの」

ゴウ「いや、こんな…」

 

レイ「あ、時間だ。 テレビ、テレビ」

司会「今、巷で噂のこの二人! いや、一人と一匹! 新作コントを引っ提げて登場です! 虫とおとうと!」

ゴウ&レイ「どうもー、虫とおとうとでーす」

レイ「って、君普通に出てきたね!」

 

ゴウ「正直、もう皆この姿も見慣れて、驚くもないでしょ?」

 

レイ「見た目の割にリアリスト! いや、インパクト大事にしてこ! そういえば、インパクトといえば…」

 


レイ「フフフ…兄貴もなかなか様になってきたじゃん」

 

ゴウ「そ、そうか…? 未だにあまり慣れないが…」

 

レイ「最初に比べれば、大分進歩したよ。 流石、兄貴だ」

 

ゴウ「また、お前は…。 …なあ、こんな高級なホテルに泊まって、高級な物食べて…。 いいのかな」

 

レイ「何言ってんだよ、これは俺達が手に入れた権利だ。 享受すべき権利なんだよ」 

 

ゴウ「…そうかな」

レイ「そう、そう。 ん、電話だ。 父さんからか。 あー、もしもし、うん、うん、元気、元気。

  大丈夫だって。 あ、ちょっと他の人から電話だ。 またかけ直すよ、うん。

  もしもし、仕事? あーはいはい、大丈夫です、入れといてください。 じゃあ、よろしくお願いしまーす」

 

ゴウ「なあ、父さんからの電話だったんだろ、いいのか? 最近、あまり家にも帰ってないし…」

 

レイ「こうやってホテルに泊まった方が仕事しやすいし、家にお金も入れてる、テレビ見てれば元気なのも分かる。 問題ないだろ?」

 

ゴウ「なら、いいんだが…」

 

レイ「細かいことは気にしなーい。 ばりばり稼げばいいんだよ」

 

ゴウM「それなりに上手くいってる。 少なくとも、この時点ではそう思えてた。 この時点では…」

レイ「おーおー、今日も出待ちが激しいねー」

 

ゴウ「こういう騒がしいのは、やっぱり苦手だ…」

 

レイ「何言ってんだ、堂々としてればいいんだよ、堂々と…」

 

警備「うわ、お前、何を!」

 

レイ「なんだ、変に騒がしいな?」

 

狂人「救世主様! 我らに救いを! 救世主様! 我らに祝福を!」

 

ゴウ「うわ、何だ、離せ!」

 

狂人「その身に宿したる神を我らに!」

ゴウ「ナイフ!? や、やめろ!」

警備「こいつ、大人しくしろ!」

狂人「くっ、また、またいつか!」

警備「あ、クソ、逃げるな、待て!」

レイ「兄貴、早く車に!」

 

ゴウ「あ…ああ…」


レイ「はい…はい…今回のが大分ショックみたいで…。 しばらくは仕事は…。 はい…はい…。

  じゃあ、また下で…。 …兄貴、大丈夫か?」

 

ゴウ「ああ…」

 

レイ「あー、まあ、あれだ…。 こういう日も…」

 

ゴウ「……」

 

レイ「あるわけないよな…、はあ。 ちょっと下で話してくる。 まあ、ゆっくりしててくれ、な?」

 

ゴウ「ああ…」

ゴウ「……なんでこんなことに。 …なんで」

狂人「ルームサービスでーす」

 

ゴウ「ルームサービス? レイが頼んだのか…? 扉の前に置いといてくれ!」

 

狂人「かしこまりましたー」

 

ゴウ「ふぅ……、一体何を頼んだんだ?」

ゴウ「……? 何もな…」

 

狂人「救世主よ、お迎えに上がりました」

ゴウ「う…うん…。 ここは…どこだ? なんだ、これ、動け、ない!」

狂人「ああ、目が覚めましたか」

ゴウ「お前は…! こんなことして何のつもりだ!」

狂人「貴方様に宿る神を目覚めさせるのです」

 

ゴウ「何を言って…」

 

狂人「その姿は、神の似姿…。 その内には、神の魂となる霊核が宿る…」

ゴウ「お前、何をしてるんだ…!」

 

狂人「魂が宿るは、脳の髄…。 しかし、殻を破らねば、魂は力を持たず…」

ゴウ「……」

 

狂人「お待たせ、しました。 救世主様に宿る神を解放しましょう」

ゴウ「ドリル!? な、何をするつもりだ!」

狂人「落ち着いて…すぐに終わります…」

ゴウ「や、止めろ! お、俺はお前が思ってるようなやつじゃ…!」

狂人「いいえ、あなたこそは救世主です。 さあ、解放の時です…」

ゴウ「ヒィ!」

狂人「…ガラスの割れる音? 下からか…」

レイ「おらぁ!」

狂人「うぐっ!」

レイ「はあ、はあ…。 兄貴、助けに来たぞ…」

 

ゴウ「レイ!? どうやって?」

レイ「確か、ここに…。 ほら、これ、発信機だ」

ゴウ「お前、いつの間に…」

レイ「もしもの時のためだよ。 実際、役に立ったろ?」

ゴウ「それはそうだが…」

レイ「全く、兄貴が誘拐されたってのに、警察は全く役に立たねえし…。 何が、中の人の写真を見せろだよ、ったく…」

 

ゴウ「……」

レイ「よし、外れた! 兄貴、そいつが起きる前に、逃げるぞ。 下で父さんが待ってる」

狂人「う…うう…」

ゴウ「あ、ああ…」


レイ「いやー、父さん、ナイス陽動。 父さんのおかげで上手くいったよ」

父「…そうか。 あのガラス、割ってもよかったのか?」

レイ「どうせ、廃屋なんだし、平気だって。 兄さんも助かってよかったな、な?」

ゴウ「……」

レイ「ハハ…」

父「ああ、その……。 ゴウ、元気にしてたか?」

ゴウ「…ああ」

父「まさか、二人がテレビに出るなんて、思ってもみなかったな。 なあ、母さん」

母「ええ、ほんとに…」

父「二人がやってたコント、なかなか、面白かったぞ。 全部、録画もしてある」

ゴウ「…そうなんだ」

父「……」

レイ「あー…その…。 そうだ、どこか遊びに行こう! 家族みんなでパーッとさ!」

父「そう…だな…」

レイ「あはは…。 ふー……」

ゴウ「……暖かいとこに、行きたい」

父「! 暖かいとこか、そうか、そうか。 どこにでも連れっててやるぞ、ああ、ああ…」

レイ「兄貴、やっぱり、そういう見た目だから、暖かいとこがいいとか?」

ゴウ「…やかましい。 …フフフ」

父「ハハハ…。 …ゴウ、お前は俺の、俺達の家族だ。 それは変わらない」

母「ええ…」

レイ「まあ、その、俺も、そうは思ってるよ、うん…」

ゴウ「…ありがとう」

end
 

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